←前回からの続き (まだ続きがあります(笑))
気づいたら船内の廊下に一人突っ立っていた。
船内ということはわかっているが、どうも病院の廊下のような雰囲気が漂っている。
殺伐としていて、あれほどたくさんの人間がいたというのに人の気配がなかった。
自分の状況を把握する前に、廊下の先からこちらに向かって歩いてくる人に気づく。
なぜか蛍光灯がきれる寸前のように音をたてながら、ちかちかと光を放ち雷のように
それを映し出した。
まるで泥酔したかのようにゆらゆらと揺らめきながら緩慢な動きだが着実にこちらにやってきている。
その独特な動きとそれに結びつくものはひとつしかなかった。
−ゾンビだ。
違和感の固まりがこちらへと向かってきている。
しかも一体と思われたゾンビの後ろからもう一体姿をあらわす。
私の嫌な予感はあたってしまった。
ここは船内だ。逃げ回れる場所に限界がある。
たとえ船外に逃げたとしてもそこは果てしなく続く海だろう。
ウェスカーはそれが狙いだったのではないだろうか。
やられた……。
私はこのときまでも、ウェスカーが元凶なことを信じて疑っていなかった。
恐怖に足がすくみ動けなくなろうとした私を、どこから来たのかいきなりクレアが叱咤した。
「何してるの!!!早く逃げて!!」
まるではじけるようにそれに反応した私は、クレアの後を追うようにしてその場から走り出した。
ゲームだったならゾンビと戦うための武器がちゃんとあるのに!!
この船に武器が装備されているとは考えにくかった。
何よりもなぜか私の頭のなかには日本の常識がかけめぐっていた。銃刀法違反である。
そこらへんにほいほいおいそれ置いてあるものではない。
クレアも私も丸腰だった。
ただ逃げることしかできないのでは、いつしか追い詰められてしまうだろう。
その時、私の頭の中によぎったのは
『どこか安全なところで身を隠してやりすごす』という考えだった。
船内はまるで見知らぬ場所だ。しかし鍵がついていて閉じこもれる場所に思い当たるふしがあった。
−トイレだ。
全国共通どこにでもかならずあるトイレだ。トイレまでゾンビははいってこないだろうと考えは、
今思えばそんな常識がつうじているならゾンビはやってないだろとツッコミをいれたくなるようなことを、
私はそのとき真剣に考えていたのだ。
まるで私の考えを読み取るかのように妙にだたっぴろいトイレが廊下沿いにあり、
クレアにもトイレに逃げ込むように叫んだ。しかしトイレの中にまでやってきたその時に、
既に個室のドアをあけてはいろうとした私をクレアがひきとめた。
「こんな個室の中に入ったら、アイツらのいい餌食よ!!」
ぎょっとした。なんでそんなわかりきったことを考えなかったのだろう。
血の気がひく。
というよりか、もはや私の頭の中では「どうしよう」という言葉がぐるぐると回るだけだった。
ゾンビはすぐそこまで来ている。
ここで出口でもある入口からでたら追ってきたゾンビとはちあわせになるだろう。
そこまで切迫した状況で選び取った選択は最悪の結果を招こうとしていた。まさにとんで火にいる夏の虫だ。
そして、恐怖の死者が容赦なくトイレへ侵入してきた。
……来た……。
が、次の瞬間、侵入してきたゾンビの頭めがけて、クレアが強烈なキックをくりだしたではないか。
その衝撃に耐え切れず、ゾンビの頭がゴロリと床に落ちた。
その頭はそれでも生きているかのように口をパクパクと動かし、不気味な固まりと化していた。
「早く!!!それを踏み潰して!!!」
クレアが叫ぶ。そうだ、ゾンビは頭を失えば死ぬ(というか元より死んでますが)
はいずりゾンビの頭をおもいきり踏み潰す歴代のバイオキャラを思い出すが、
あまりの不気味なゾンビの表情に気持ち悪さが勝っていた。
しかも顔が踏む方にきている。踏もうとしている場所がちょうどパクパクと不自然なくらいに
ひらいている口のあたりなのだ。
あの口の中に足が入ってしまったらどうしよう(涙)
き、気持ち悪いかも〜〜〜〜〜!!!!
踏まなくてはいけないのに踏めなそうにないそんな私を見かねてか、
クレアがその頭を勢いよく踏み潰した。
あまりのステキな漢(おとこ)っぷりにクレアに後光が見えた。
(またここで場面が切り替わる)
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