学生の手記・伍

村人と話し合い、氷室邸に結界を張ることにした。

もともと、その役割のあった五神神社を直すことにした。

神社にあった鏡は、すべて割れていた。

代わりを探さなければ、ならない。

僕は、鏡を氷室邸の中から持ち出した。
これで、少しでも、まわりへのしょう気が少なくなるのなら...。

鏡の中に、女性の姿があった。
口元だけ、笑うと、僕にささやいた。

”無駄よ・・・・・”


学生の手記・陸

夜が来る・・・・・・。
あれが来る・・・・・。

ここに来たばかりのときは、ただ彼女はすすり泣いて、誰かを捜していた。

おそらく、彼女は、その”誰か”を見つけた。

もう、すすり泣く女ではない。
力のない浮遊霊を、次々と食らっていく。

彼女の死に様に、なぞらえて。


学生の手記・七

僕は、白い着物の少女に導かれて、氷室邸を囲む結界を完成させた。

それ以来、氷室邸の外で、”ありえないもの”を見なくなったという。

僕は村人たちに、感謝された。
だが、誰も僕が当主の弟だということを、知らなかった。

誰が、僕に電報をくれたのだ・・・?


学生の手記・八

白い着物の少女は、霧絵と名乗った。
彼女は、僕に、助けて欲しいと言った。

何が出来るかわからない。
けれど、もしかしたら、僕の射影機が、希望となるかもしれない。

僕は氷室邸の住人となった。
このころには、もう昼にも、”ありえないもの”が見えるようになっていた。

年の離れた兄・・・氷室家当主の姿もあった。

だが・・・・。
半狂乱で日本刀を振り回し、去っていく兄は、

一度も僕に気がつくことは、なかった。


学生の手記・仇

今、僕の横には、小さな霧絵がいる。
僕は、御神鏡を封じ込めた射影機とフィルムを彼女に渡した。

後は、僕の命で、フィルムに霊力を込めれば、完成だ・・・・

遠い未来の誰かに願う。

兄を・・・霧絵を・・・、救ってほしい・・・・。



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